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2016年 ザ・プレーヤーズ選手権
期間:05/12〜05/15 場所:TPCソーグラス(フロリダ州)

第5のメジャー 松山英樹を寄り道させた勇気

苦楽をともにするサポートスタッフでさえ、驚いた決断だった。フロリダ州で行われた「ザ・プレーヤーズ選手権」初日の朝。松山英樹は1番ティグラウンドの裏にあるパッティンググリーンで、2本のパターを念入りに打ち比べていた。スタート直前に1本に絞ったのは、センターシャフトの大型ヘッドモデル。愛用するピン型パターは移動用車両のハッチバックの中で、静かにティオフ時刻を迎えた。

4打差を追ったジェイソン・デイ(オーストラリア)との最終日最終組対決に敗れた“第5のメジャー”。4日間の松山におけるトピックスと言えば、この新しいパターを実戦投入したことだった。3年ほど前に作ってもらったパターに、長方形の太いグリップを挿した。ヘッドの大きなマレットタイプを打つ姿は、実際の試合では極めて珍しいシーンだった。

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2013年秋、米ツアーに本格参戦してからいまも、1Wは08年に発売されたモデル(ダンロップ スリクソン ZR-30 ドライバー)を“エース”にしている。しかし、必ずしも頑固に職人気質を貫いているわけではなく、試合以外のテスト段階ではあらゆるクラブを打ち、評価を下してきた。

パターについても同じ。今週、ホテルの部屋に持ち込んだクラブは20本以上あった。そのうちパターだけで5本前後。それが日常だから、練習日の彼の周りには“松山詣で”よろしく、あらゆる品を持った海外メーカーの担当者が列を成す。松山も多くのケースで、偏見もなく素直に応じる。今週の開幕2日前には、あるブランドのパターの打感に好感触を得て、帰り間際に試し打ちを続けた。

松山の“コレクション”にはスコッティ・キャメロンの「ブルズアイ」というクラシカルなパターがある。ヘッドの作りが薄く、ボールを意図的に操るのに優れているモデルだ。ある日、試合前の練習ラウンドでこのパターを握った際、本人は「簡単ですよ。このパターの方が」とこともなげに言ったが、そこで当然浮かぶ疑問もあった。

ならば、なぜ使わないのか。練習では使えるものが、試合になると、なぜ――?

松山は今週、その答えめいたものについて、こう言った。「使ってみたいと思っていたが、なかなか替える“勇気”もなく、ずっとやっていた」。エースモデルでない、新しいパターを試合で握るメリット。それをずっと感じられないでいた。

だが4月の「マスターズ」を終え、ひとつ「気分転換」できる余裕が生まれたのだろうか。スイッチした大型マレットのパターは結果としては奏功した。初日24パット、2日目は26パットと安定。「試合で試して使ってみたら良かったので、これからの試合でも、迷ったら使える可能性は出たと思う」。シーズンを戦っていれば、良いときも悪いときもある。フィーリングが思わしくないときのオプションが増えたと言っていい。

効果を実感できたのは、ニューモデルそのもののフィット感だけではない。決勝ラウンドで戻したエースパターへの信頼度は、下がるわけではなく、むしろ上がったのかもしれない。「あれ(エースパター)で試合も勝ってきた。ミスも多くしている。だからこそ自分がうまく打てなかったとき、ミスの傾向、いままでにないミスの仕方だなと分かるパター。新しいパターで、結果がいいからと続けていては、モヤモヤしてしまいそう。それは早めに止めたかった」。ここぞというときのため、愛着あるパターを使ったときのストロークの問題点をあぶりだす効果も感じることができた。

これまでひたすら同じパターを使い続けてきた松山が、思い切って進んだ寄り道。だが彼はそれを許すだけの、太い幹線道路を時間をかけて作ってきた。第5のメジャーで手にした勇気は、4大メジャー制覇につながるものだ。(フロリダ州ジャクソンビル/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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