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母として…プロゴルファー茂木宏美の決断と仕事・育児を支えた人たち

29日に国内女子ツアーからの撤退を表明した茂木宏美。国内メジャータイトルを獲るなどツアー通算6勝の39歳は「娘が産まれてから、娘のことを第一に思ってきた。いま自分は何を優先すべきなのか?ということを考えた」と、勝負師としてではなく一人の母親として決断を下した。

2014年2月に長女・和奏(わかな)ちゃんを出産してから、毎年のように漠然と考えていた”ツアー撤退”。より現実味を帯びたのは、出場権のなかった11月1週目「TOTOジャパンクラシック」のときだ。和奏ちゃんを授かった際にかかった医師のところへ検診に行った。「2人目が欲しいなら、いまの生活は厳しいと思った」。娘にきょうだいを作りたい――そんな思いも、今回の決め手となった。

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「母親」と「プロゴルファー」という役割を両立させる生活は、約3年に及んだ。苦労も絶えなかったが、「やり切った」と充実感もある。“産休明け”の2014年は「娘が飛行機に乗れないので」と、空路を使わずに行ける場所での試合だけに出場した。フル参戦した翌年からは、飛行機に乗ると気圧変化による耳鳴りで必ず泣き出す娘に「水分をとらせたら、治まって泣きやむ。でも、水だとすぐ飲み込んで、またすぐ泣き出すから、リンゴを食べさせるのが一番いい」と自ら秘策も編み出した。

「周りに支えられてきた」。いま改めて思うのは、家族らのサポートへの感謝だ。夫で元スノーボード選手の窪田大輔さんは「俺が母になるから(茂木は)父親になって」と、ラウンド中に娘の面倒を見た。茂木は「家族がいたから(頑張れた)」と微笑んだ。

クラブハウス内では、多くのライバル選手も和奏ちゃんをかわいがった。キム・ハヌル(韓国)ら海外選手があやす姿も見られた。選手だけではなく、韓国人選手の通訳を担当する女性が1日中、抱っこしているときもあった。この女性は「わたしにとって和奏は親友なんです。初めてゴルフツアーの現場に仕事で来たのが2年前。周りの誰も知らなくて、すぐに辞めたいと思った。でも、そのときに和奏が無邪気に遊んでくれたんです」と言っていた。

母親の仕事場で愛情を注がれて育つ娘を、茂木は「他ではできないこと。本当に良い経験をさせてもらっている」と見守っていた。だが、来年には3歳で、幼稚園に入る年齢となる。日々、成長していく娘を見て思うことがあった。「同世代の子供たちとも遊びたいんだろうなって…」。そして、わが子の「普通」の幸せを願う母親としての思いは、自らの職を退く決意を固めさせた。

厚生労働省の発表によると、2015年の女性(25歳~44歳)の就業率は71.6%。男女雇用機会均等法が成立した1985年から、約15ポイント上昇した。女性の活躍の場は、確実に広がってきたと言える。

一方で、子を持つ母の「仕事」と「育児」の両立は依然、厳しい。30代女性の就業率が20台後半や40代~50代前半に比べて低くなる「M字型カーブ」は30年間で緩やかにはなったが、なくなってはいない。子どもを保育園に入れるための「保活」なる言葉が当たり前に使われるなど、社会全体の基盤も整っていない。子どもが産まれたので仕事を辞めるという男性は、ほとんどいない。2015年の男性の育児休業取得率は過去最高とは言え、2.65%にとどまる。仕事か育児か-。その2つを天秤にかけて「選択」を迫られるのは、多くの場合、女性だ。

茂木は出産後、腰痛を発症するなど身体の変化にも苦しんだ。「最後は心も身体もギリギリでした。来年もやるとなると、また家族の協力も必要になるし」と、潔くクラブを置いた。様々なものを背負って、駆け抜けた母親ゴルファーは言った。「こんなプロゴルファーがいるってことを知ってもらえたらいいですね」。(編集部・林洋平)

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