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あれから4年…諸見里しのぶ“27歳の決断”を語る

2009年、メジャー2大会を含む年間6勝を挙げ、賞金女王レースを引っ張った諸見里しのぶは、最終戦で横峯さくらに逆転を許した。まさか、その後、1度も優勝がないまま何年も過ごすことになろうとは、誰にも想像できなかったに違いない。2013年シーズンも残り3戦となった「伊藤園レディス」は、まるで当時を再現するかのような状況だ。現在の賞金ランク1位・森田理香子と同2位・横峯さくらが記者たちに囲まれている横を、速足で通り抜けた諸見里にクラブハウスの外で話を聞いた。

「苦しい。単純に苦しいです・・・」。表情は普段通りに明るいが、言葉は重い。トーナメント会場では、落ち込んだ素振りを少しも見せないが、「その分、引き籠もっています」と1人になった時に反動が襲ってくるという。今季、諸見里は5月の「ほけんの窓口レディース」6位が最高成績。8月以降の後半戦で予選を通過したのはわずか1試合で、賞金ランク70位。これが4年前にスポットライトの中心にいた彼女の現実だ。

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最終戦の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」に出場できる選手は賞金ランキング上位25位までのため、現実的には今シーズンは来週の「大王製紙エリエールレディスオープン」まで残り2試合。09年に公式戦年間2勝で獲得した5年シードが来年14年まであるとはいえ、このままいけば賞金シード圏(50位)を外れる。鳴り物入りでプロ転向した05年以降、もちろん最悪の成績だ。

「ジュニアの頃からやってきたスポーツなのに、苦しいと思ってやっている自分がいることが苦しい。試合に限らず、プライベートのゴルフでも難しいと思った」と、深刻な胸中を明かした。

なぜ、ここまで落ちてしまったのか? 諸見里は「気持ちの問題」と断言する。最初にその兆候が現れたのは07年に日本代表として出場した南アフリカでのワールドカップ。上田桃子と組んだこの試合で、「はじめて怖いと思った」とショット前にマイナスイメージが頭をもたげた。諸見里は自身を「心配性」だと認めている。「先、先を考えると不安になってしまう」という症状は2年前の11年頃から強くなり、コース上ではキャディの川口淳さんのサポートと励ましに支えられながら戦ってきたという。

1年前からは、メンタルコーチにも指導を仰いだ。「今までは、自分の意見を言おうとしても言葉が詰まって出てこなかった。親友にも自分の気持ちを言えなかった」という諸見里だったが、徐々に自己主張ができるようになってきた。その変化は、2年ほど悩み続けた問題にも出口を与えた。この6月に覚悟を決め、そして先月、10月になって、ついに大きな決断へと至ったという。

「拠点を三宮から東京に移すことに決めました。今まで六甲国際の(江連忠ゴルフ)アカデミーにいて、(江連)先生やみんなに甘えられる環境があった。安心感があったけど、自分が成長するためには、自分で物事を考えられるように自立しなくちゃいけない。自分にとってはゴルフ人生で一番大きな“27歳の決断”です」。

高校1年で飛び込んだ環境から、10年以上の時を経て巣立つ決意をした。引っ越しはこのオフだが、コーチやキャディからも離れ、一人立ちの道を歩む。現時点では、オフの予定などは一切なにも決まっておらず、「ワクワク半分、不安なドキドキが半分です」という。爽やかな笑顔に後悔の跡はない。

「これだけ状態が悪くても、ファンの人たちは“頑張れ”って言ってくれる。スポンサーさんにも申し訳ない。すごく感謝しているし、ゴルフを投げることはできないです」。賞金女王争いでヒートアップするツアーの会場で、かつてのヒロインは生まれ変わるための孤独な戦いを静かに語ってくれた。(千葉県長南町/今岡涼太)

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