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ベテランの駆け引きで今季2勝目を達成した福嶋晃子

2006/10/29 18:00

武蔵丘ゴルフコース4番ホール。このホールは、179ヤードと距離のある谷越えのパー3で、最終日の平均ストロークは3.2034、難易度は18ホール中4番目と、選手たちがスタートしてから最初に迎える難関だ。最終日、最終組の3人がこのホールに着いた時には、当然のごとく、まだ2組前の選手達がグリーン上でプレーをしていた。

4番ティからグリーンへと続く吊り橋は選手及び関係者しか使用出来ない為、多くのギャラリーは迂回路を通って4番グリーンへと先回りする。ティグラウンドでは前の組が順番待ち。スタート早々訪れた、このエアポケットのような空間で、直前にバーディを奪って追撃体制に入った宮里は、はやる気持ちを抑えつつ、じっと前方のグリーンを見つめている。

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一方、追いつかれた横峯さくらはというと、少し離れた小屋の陰でキャディバッグから手鏡を取り出して、サンバイザーにうまく髪を収めようと、女の子らしい努力をしている。

そこに福嶋晃子がやって来た。福嶋はしばらく横峯の様子を観察していたが、「こうした方がいいんじゃない?」と笑顔で横峯に話しかけ、一緒に髪を直してあげた。「ありがとうございます!」横峯の弾んだ声が周囲に響いた……。

もし福嶋が自分だけの世界に入って、他の選手と口も利かずにプレーをしていたなら、相手も同じように牙を剥いたかもしれない。しかし福嶋は、北風と太陽の寓話でいうところの太陽のやり方を選択した。それは、今年2年ぶりに優勝を勝ち取った自信からかもしれないし、宮里藍・横峯より10歳以上年長の経験がそうさせたのかも知れない。

「今までの悔しさを思ったら、1勝じゃ収まりきらないと思って、先週くらいから、もう一つ勝ちたいって強く思うようになってきた」という福嶋。だがこの日のラウンドは、その熱い想いを周囲に微塵も感じさせない冷静なものだった。

「あっこはすぐ慌てるからね」。亡くなった祖母の言葉が、今も心に残っている。「もっともっと自分をコントロールしていきたい」。祖母の言葉に答えるように、福嶋はきっぱりと言い切った。(編集部:今岡涼太)

今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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