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グラブをクラブに持ち替えた元大リーガー長谷川滋利の夢

2017/08/23 11:30

~49歳でゴルフ「全米アマ」本戦に出場した快挙~

元大リーガーの長谷川滋利は地区予選会を勝ち上がって「全米アマ」出場権を獲得した(USGA/Chris Keane)

「全米アマチュアゴルフ選手権」の地区予選会結果を速報する飾り気のないホームページ。7月24日、日本人留学生たちの活躍を確認していた私の目に飛び込んできたのは、「通過者」として掲載されている、妙に既視感のある日本人名だった。「Shigetoshi Hasegawa」。その時、この綴りから「長谷川滋利」に一発で人名変換できた人はどれほどいただろう?

メジャーリーグ(MLB)で投手として約9年にわたって活躍した元プロ野球の長谷川--そう気付いてからも、そこが南カリフォルニア地区の予選会だったことへの驚きは収まらなかった。48歳(当時)の長谷川は、プロを目指す世界中の若者たちの腕試しの場で、かつては松山英樹も挑戦したことがある「全米アマ」に、“有名アスリート枠”としての推薦出場ではなく、自力で出場権をつかんだのだった。日本だけでなく米国でも広くニュースとして伝えられたのは当然だ。

地元紙ロサンゼルスタイムスは「彼はいま打者ではなくグリーンに対してピッチングしている」との見出しで長谷川の快挙を報じた(撮影:アンディー和田)

「ゴルフを真剣にやり出したのは5年前ぐらいから。この全米アマ挑戦は4回目、最初は話にならんぐらいダメでしたけど。 全米オープンやPGAツアーのソニーオープンの予選にもチャレンジしています」。8月14日にカリフォルニア州ロサンゼルス郊外で開幕した本戦で、報道陣から「なぜ?」と尋ねられた長谷川は、自身がゴルフに取り組む姿勢を明快に説明した。

「野球だと日本シリーズとかワールドシリーズ、オールスターゲームには一般の人は絶対出られない。けど、ゴルフだと『全米オープン』にアマチュアも出られる。今回もこの『全米アマ』で決勝まで進む2人には『マスターズ』への招待がある。最初は不思議に思ったけど、ゴルフはそれだけ夢のあるスポーツだと思います」

趣味の枠を超えつつある没頭へと至る経緯も明かした。ゴルフとの出会いは、ドラフト1位でプロ野球のオリックス・ブルーウェーブ(当時)入りした22歳の時だった。前日に練習場へ1度行っただけで先輩に連れ出された初ラウンドで「160か180ぐらい叩きましたよ(笑)。まぁ面白くないスポーツだなと最初は思いました」。ただ、もともとバッティングにも自信があった長谷川は、ドライバーが当たるようになると「野球のボールより飛ぶじゃないですか。 気持ちよかったですね」と魅了され始めた。飛ばしに熱中しすぎて100切りに「3年かかった」という。

日本のプロ野球で6年間活躍した後、MLBに移籍したことは、ゴルフとの関係を深くするきっかけにもなった。「アメリカに来てからはエンゼルスもマリナースも、シーズン中もゴルフはしてもいい球団で、球団のチャーター飛行機にはいつも自分のクラブを積んでもらっていました。他のチームにはゴルフ禁止令があるところもあるようですね。シーズンは年間162試合ととても長いですし、遠征先の休みの日にするゴルフはとても良い気分転換になっていました」という。

「日本の場合はゴルフに行くと一日かかってしまうので同じようにはできないですが、アメリカでは9ホールだけするのもOKですし、朝イチで18ホールやっても(スループレーで)昼には終わる。球場に行くのは通常午後4時ですから、昼ご飯を食べてゆっくりしても十分間に合います」。転戦の合間には、メジャー開催コースのオリンピッククラブ(カリフォルニア州)や、松山がPGAツアー初優勝を飾ったミュアフィールドビレッジ(オハイオ州)でもゴルフを楽しんだ。

引退後の現在は、カリフォルニア州ロサンゼルス南部を拠点として生活している。オリックス・バッファローズでシニアディレクターを任され、MLBでプレーする選手をスカウティングして日本に報告するのが日常生活という。「主には午前中にゴルフの練習をして、午後から夜は仕事。西海岸の午前中は日本の深夜なので電話がかかってくることもないですから。仕事も一所懸命やるけどゴルフもやってます」。いまやハンディキャップはプラス2.0。ベストスコアは「64」(サンディエゴ・アローウッドGC)の腕前だ。

長谷川滋利のスイング(後方)

49歳になって迎えた長谷川の全米アマ本戦は、予選2日間で「81」「80」(いずれもパー70)をたたいて通算21オーバーの296位に終わり、決勝トーナメント進出には遠く及ばなかった。ホールアウト後の地元メディア取材には、英語で「ゴルフはスコアが悪くても途中で(エンゼルス時代のように)ソーシア監督から交代を告げられることはないので最後まで諦めず頑張ったよ」と笑顔で応じた。

初の全米アマ本戦出場で深めた自信と手ごたえを糧に、ゴルファー長谷川は「夢」を追う(USGA/Chris Keane)

「挑戦はいま始まったばかり。今年の秋にはアマチュア資格のままPGAツアーチャンピオンズ(米シニアツアー)の予選会挑戦もしたい。来年の『全米アマ』はペブルビーチで開催されるのでまた予選突破して本戦に出場したいですね」

今回、世界29カ国から本戦出場した312選手の平均年齢は、22.39歳。長谷川は来年8月1日にシニア大会出場可能な50歳になる。「日本の試合は将来的には出たいですけど、野球のシーズン中はオリックスのこともあるので、仕事柄難しいかもしれませんね。でも、本当の夢はソニーオープンとかこのロスのジェネシスオープンなど、PGAツアーの予選を突破して一度はレギュラーツアーに出てみたいんです」と目を輝かせて夢を明かした。

「僕がメジャーリーグに来たときに『あっ長谷川ができるんだったらメジャーリーグに俺もいけるじゃん』みたいな感じで挑戦してくれた選手も多かったと思うんで、ゴルフも『長谷川ができるんやったら俺もやりたいな』って思ってくれたらいいですね」

やりだしたらトコトンのアスリート魂で、ゴルファー長谷川の挑戦はまだまだ続きそうだ。今後の活躍に期待したい。(取材/アンディー和田)