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三田村昌鳳が語る全英オープン(1)

2011/07/12

奥深さの宿る、大自然と人間力の戦い

1999年、メジャー初優勝に挑み、ついに
1999年、メジャー初優勝に挑み、ついにはバリー・バーンへと迷い込んだジャン・バンデベルデ【拡大写真】

ほんの些細な、そして気がつかないほどの「何か」によって、歯車が狂ったり、かみ合ったりする。そして怖いのは、しばらく過ぎてからそれに気づき、そのときには、歯車を止めて修正することができなくなってしまう。それがリンクスでの全英オープンのゲームの怖さである。

リンクスでの戦いは、予期せぬキックの行方でゲームが左右することがしばしばある。ナイスショットが、必ずしも報われるということはない。アメリカのコースは単純明快だ。パワー・イズ・NO1。勧善懲悪。つまり真っすぐ飛ばす人間に果報がある。ミスした人間は罰せられる。ところが、ここはもっと人間臭い。

ナイスショットが報われるだけが人生じゃないと言っている気がするのも、このリンクスコースである。キックによって、運不運がある。それが人生だし、そのとき自分がどう対処するのかが問われるわけだ。最近、アメリカでも、アメリカン・リンクスというコースが注目されているが、やはり人間力と自然との折り合いをどう自分のゴルフに結びつけるかが問われる魅力に、アメリカのゴルファーたちも着目したのだろう。

世界最古のオープン競技である全英オープンは、その基本的なゴルフゲームの姿勢を崩さない。

だから、全英オープンを取材していると、必ず人間と自然という大きなテーマを問いかけられる。そして、人間の勇気や叡知、感性を振り絞ることによって、そこから活路を見いだす人間力の凄さを知らされることがある。かと思えば、1打の過信や勇猛果敢の攻め、見栄で優勝を逃すこともある。

例えば、1999年。優勝したのはポール・ローリーという無名選手だった。でも、彼の名前を覚えている人は、少ない。むしろ、71ホールを終えて、つまり最後の1ホールを残して、トップを走って悪夢のような敗退をしたフランスのジャン・バンデベルデの名前と悲劇を記憶している人は、たくさんいるに違いない。3打リードで迎えた最終ホール。フェアウエイを蛇行するようにバリー・バーンという小川が流れていて、それがグリーン近くを横切っているホールだ。

「最終ホールのティグラウンドに立って、ともかく第1打をフェアウエイに真っ直ぐ、第2打でグリーンを捕らえて、2パット。そのイメージしか頭になかった」(バンデベルデ)

しかし、第1打のドライバーショットは、ボールが右にそれた。隣のホールのフェアウエイに落ちて浅いラフに止まった。残り185ヤード。彼は、ミスショットしたにも関わらず、そこから2番アイアンを取り出してグリーンを狙った。が、それも右に飛んでギャラリースタンドのパイプにあたり、大きく跳ねて深いラフ。まだグリーン手前の小川を越えていない。しかもその先にバンカーがある。

悪夢のはじまりだった。膝の上まで隠れる深いラフ。ショットしてもどんなふうにボールが出るか解らない状況だ。彼の打ったボールはフワリと上がって、すぐに失速し手前の小川に落ちた。これで3打費やした。彼は、小川にあるボールを見つめシューズを脱ぎ、状況を見に行った。そこから打つべきか、それとも拾い上げて1打罰付加して打ち直すかの決断だった。彼は、ボールを拾い上げた。だが打ち直したボールは、今度は、グリーン手前のバンカーに入れた。ようやく6打かけてグリーンに乗った。そして3打差が消えた。プレーオフ。そのときの彼は、もう茫然自失だった。そして敗れた。

「あの第2打を2番アイアンで打たなければ……」とうなだれた。

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三田村昌鳳(みたむら・しょうほう)
1949年、神奈川県逗子市生まれ。『週刊アサヒゴルフ』副編集長を経てフリーのジャナーリストに。95年、米国でスポーツライター・ホールオブフェイムを受賞後、翌年には第1回ジョニウォーカー・ゴルフジャーナリスト・アウォード最優秀記事賞に選ばれる。翻訳・監修に『タイガー・ウッズ-伝説の序章』、著書に『伝説創生 タイガー・ウッズ神童の旅立ち』など。また、日蓮宗の僧侶として自坊(神奈川県・逗子市の法勝寺)の副住職も兼ねる。

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